マネージャーを担っていると、メンバーから「辞めたい」と相談される」ことが時々あります。
良くない話ですが避けては通れないこととして受け止めなければなりません。
今回はその時の対応について私なりの考えを示したいと思います。
言われた時点で失敗している
最初に、そのメンバーがそこに至るまでの心境について考えてみます。
通常、急に思い立ったということはあまり無く、時間をかけてそれなりに考えた挙げ句の行動であることは容易に想像できます。
理由は様々でしょうが、大抵の場合、根底には「不満」「不安」「悩み」があるはずです。
ここで大事なことは、こういったメンバーに限って言うとマネージャーとして既にエンゲージに失敗しているということの認識です。何故ならばマネージャーの最大の仕事は「個人を良い状態に保ち」、「チームを良い状態に保つ」ことで「チームとして最大の成果に結びつける」ことだからです。
良いことなのか?悪いことなのか?
では、どのように対応すべきか?についてですが、
先ず、退職という選択肢が本人にとって「喜ばしいこと」なのか「不幸の始まりなのか」について理解を深める必要があります。
・自身の実現したいことがしっかりあって、次のステップとして必要な経験、習得すべきスキルが明確になっていて、会社はポジション含めそれを経験させる場を用意することができず、社外に機会を求めたいということが自身の言葉で語れるレベルであれば、もはや「卒業の時期」であり、喜ばしいことと言えます。マネージャーとしては次の挑戦を快く支援すべきです。
・逆に、将来やりたいことが未だ決まっておらず、なんとなく仕事が合わない、チームに馴染めない、給料が安い等々、であれば、これは本人にとって不幸なことになる可能性が高いということになります。ここはマネージャーが今一度コミュニケーションを強化して気持ちを立て直すことに着手しなければなりません。
再生への軸は「企業理念への共感」と「将来との結びつき」
そのコミュニケーションですが、単に相手の言っている理由を真に受け、その場の乗りで約束をすることは当たり前ですが最悪です。
あくまで企業理念への共感、今の仕事と会社への貢献や将来との結びつけを軸に話をしていくことが重要です。
途中でミスマッチ(企業の理念やVISION,MISSIONへの共感が全く無く、お金を稼げれば人やチームのことなど基本的にはどうでもいいと言った考え方を持っている)を感じたら、そもそもメンバーの入れ替えが必要なのでわざわざ引き留めることはしなくて大丈夫です。
しかし上記のコミュニケーションは信頼関係がベースにあってこその話で、もしマネージャーとの関係がそもそもの原因であればHR等の専門部門の協力を得ながら、社外に活躍機会を見出してもらった方がいいのか?社内異動で再生を目指してもらった方が良いのか?を判断していくようにします。
重要なことは、次のステージを社外に求めなければならないメンバーを、直近の業務的なことで「困る」からと言って引き留めてはならないことです。
メンバーが将来まで見据えた「自身の人生」の話をしているときに「足元の業務」の話を上司にされたらどうでしょう? 秒で蔑まれて終了ですよね。
また、一旦引き留めが上手くいったとしても根本的な問題は何も解消されていない訳ですから何れ同じことになります。その時間が経過すればする程お互いの再スタートが遅れることになります。(お互いにとって不幸です)
学び確認の場への切り替え
それでも最終的に退職の方向に進むことも少なくありません。
そうなった場合は、お互いにとって「学び確認の場」に切り替えてクロージングに進みます。
・本人にとって:この会社で身につけたことが自分の将来のありたい姿にとって役に立つという道筋の確認と同意、マネージャーからこれまでの感謝とこれからの活躍を祈念を示す。
・マネージャーにとって:メンバーの心理の移り変わりをもう一度確認し、マネージャーとしての自分の課題(どのタイミングで察知すべきだったのか)を見出し、次に活かす。
社員である前にひとりの人生ということに重きを置いてメンバーとコミュニケーションすることは大事です。そして、メンバーの人生と今の仕事を結びつけることを常日頃から怠ることの無いようにしていくことが重要です。
エクセレントマネジメントワークス 原田 貴之