マネージャーとの話で「長きにわたり成果の出ないメンバー」についての愚痴と悩みが入り混じったようなことをよく聞きます。
理由を聞くと、「やる気が無い」「言うことを聞かない」「自分を過大評価している」「協調性に欠ける」「常に後ろ向き」。。。まあいろいろな表現で例えられる訳ですが。
私の考えとしてはこれまでのコラムでも書いてきた通り、このいろいろな表現で例えられる理由についてのケースはあくまでマネージャーの問題であり、それを改善できないことが課題だというものです。それを改善していくためには信頼関係の構築を地道にやりながら、メンバーのエンゲージメントを高めるように自らのマネジメントスキルを身につけ効果的に実行していくということに尽きるということです。(よろしければ以前のコラムも参考にしていただければと思います)
最も悩ましい状況
今回考えたいのは、「まじめ」「努力している」「好感が持てる」「会社やチームの理念に共感もしている」要するにいい奴、ある意味人として立派なのだがどうしても成果が出ないというメンバーについてです。こう言ったメンバーと一緒に仕事をしていると、「なんとか成果を出させてやりたい」と思うのはマネージャーとして当然ですし、大方スキル面でも不十分だったのでしょうから十分な時間を掛けてこれまで指導してきたことは容易に想像できます。
マネージャーにとって最も悩ましい状況だと思います。
心を入れて背中を押す
では、どのようにしたら状況を改善できるか?
私の考える答えを最初にに言いますと、マネージャーとして十分手を尽くしたのであれば「判断」しなければなりません。
これは「ミスマッチ」なのだと。
状況を根底から変えなければならない、今のままでは誰も幸せにならない、ということです。
もうお分かりと思いますが、私なら「社外に今後の人生の活躍機会を求めるべき」というコミュニケーションをおこないます。
メンバーとしてという前にそのメンバーが人として素晴らしいのであれば尚さらなるべく早くそうすべきです。
理由としては、人生はたった30,000日しか無いからということがあります。
例えば、30歳であれば既に1/3は使ってしまっている、40歳であれば半分使ってしまっている、心身ともに元気な労働人生の時間を考えると残りはもっと少ないはずです。
特に40歳を超えているメンバーには更に難しいことがあります、次の人生の選択肢(再出発の場)の問題です。給料もそれなりに高いのもネックになるでしょう。
そうはいっても本人も頑張っているわけだし、今辞められたらチームとして仕事が回らななくなる、他のメンバーに負荷が掛かりいづれ疲弊してしまうので得策では無いという意見もあるでしょう。
しかしそれは私に言わせれば間違いだということです。
もし、仮に5年うまくチームでカバーしながら言葉は悪いですが先延ばしできたとしてもいづればその時が必ず来ます。
そうしたらそのメンバーは45歳です、活躍できる就職先の選択肢は狭くなっていませんか?そうなったらそのメンバーの次の人生どうなりますか?誰がそうさせたのですか?ということだと思います。
人生における難しい岐路ですから本人だけでは中々決断できないかもしれません、外に飛び出すのは誰にとっても怖いからです。だからこそ俯瞰してマネージャーが見えているのなら早くリリース、背中を押してあげることがとても重要なのです。
例え、その時は恨まれるかも知れません、いや恨まれるでしょう。罵声を浴びるかもしれません。だとしてもそのメンバーのことを思うのなら判断をすべきです。
会社によって勧奨退職の考え方や進め方は様々だと思いますので担当部門と慎重に協議をしながら進めていくことは言うまでもありませんが、大事なことは、たまたまこの会社でこの仕事が合わなかっただけで、そのメンバーの社会的な価値が低いということでは決してなく、人として「いい奴」なら必ず活躍できる場があるということです。
マネージャーとしての責任
少し付け加えますと、先ほどから「残りの人生はどんどん少なくなっているから」という切り口で説明をしてきましたが、私が本当に言いたいことは実は逆で あと30年ある40年あるからいくらでも取り戻せる、この会社での苦労からの学びは必ずいつか生きてくる、たとえ心身ともに疲れ果てたこの会社での経験だったとしても、「ストレス耐性を上げた」というこれから将来にかけて結構大事な能力を身につけていることこそが重要ということです。
「今のままでは誰も幸せにはならない」と言いましたが、それは本人だけでなくチームや会社にとってもそうだという意味です。
言うまでもありませんが、マネージャーの最大の役割はチームで最大の成果に結びつけることです。そのためにマネージャーは心して「判断」する必要があります。
このことは未だリーダーとしての「決断」レベルではありません。マネージャーは正しい「判断」、リーダーは腹を決めて「決断」をする人とするならば、我々の目指すマネージャー象は「マネージングリーダー」ということになるのです。
私はこれまで今回取り上げたようなケースを数多く経験してきました。その度に思うことはこれは常にマネージャーである自分の責任だということです。ゼロにはできないことは分かってますが、できる限り少なくして行かなくてはならないと思っています。
エクセレントマネジメントワークス 原田 貴之